犬の心臓の病気、僧帽弁閉鎖不全症とは?治療や予後について徹底解説します。

僧帽弁閉鎖不全症とは 犬 心臓病

予防医療が広まり、動物医療の質もあがったことで長生きできるペットが増えてきています。一日でも長く愛する我が子といたい、それは全ての飼い主さんが感じている事ですよね。

ですが長寿化している反面、シニア期では加齢に伴う病気を抱えることも多く、定期的な通院や内服薬での治療が必要になることも多くあります。

特にシニアの小型犬に多いとされているのが【僧帽弁閉鎖不全症(ソウボウベンヘイサフゼンショウ)】またはMRです。ではこの病気、治すことはできないのでしょうか?今回は僧帽弁閉鎖不全症に関する治療や予後についてまとめてみました!


僧帽弁閉鎖不全症とは

僧帽弁閉鎖不全症 ヨークシャーテリア

僧帽弁閉鎖不全症(またはMRと呼ばれる)は心臓の病気です。

左心房と左心室の間には、血液を送り出すために開閉する僧帽弁という弁があります。この弁の働きによって左心房から左心室へ血液が送り出され全身へと循環していきます。しかし何らかの理由で弁が正常に動かなくなると、心臓内で血液が逆流するようになり、僧帽弁閉鎖不全症と言われる状態になってしまいます。

小型犬に多く発症する傾向にあり、シニア期では約3割のワンちゃんが心臓に何らかのトラブルを抱えるとも言われています。また、キャバリアは先天的に僧帽弁閉鎖不全症を発症しやすく、若齢のうちから定期的なチェックが必要とされています。


症状やなりやすい犬種、年齢はある?

キャバリア 心臓病 定期検査

10歳を超えてくるとグッと発症するワンちゃんの数が増えてきます。初期症状は肉眼では確認しにくく、動物病院での健康診断時に心臓の雑音がきっかけで見つかるケースが多いようです。

犬種としてはキャバリア、チワワ、プードル、マルチーズ、ポメラニアンなどが統計的も多い結果となっています。特にキャバリアは10歳未満で発症することも多く、若い時から定期的に動物病院で心音チェックを受ける事をお勧めします。

初期は目に見えた症状はありませんが進行すると動くことを嫌がるようになり、呼吸促拍(呼吸が早くなる)やチアノーゼ、肺水腫、など命に関わる重篤な症状が見られるようになります。

治療の方法

犬 心臓検診 治療

原則、臓器が失った機能を回復させることはできません。僧帽弁閉鎖不全症も例外ではなく、完治させる治療ではなく進行を遅らせる治療がメインとされています。

血管拡張剤や利尿剤、様々な種類の薬を組み合わせ心臓への負担を減らしていくことで病気の進行を遅らせます。定期的な通院、検査、お薬と、飼い主さんの時間的・経済的負担も出てきますが、早い段階で見つけ、治療を開始できればその分心臓にかかる負荷を抑える事ができます。

ただ、最近になって外科的な治療を行う動物病院も出てきました。ペットの心臓に関わる手術はずっと研究されてきていたものの、その難しさから行う病院がほとんどなかったのが実情です。

それが医療技術の進化によって実際に行うことができる病院が出てきたのです。費用は200万ほどかかり、なかなか予約も取れないこともあるようですが実際に手術を受けた場合、症状から解放される、または軽減できる子が多いようです。

一般的な動物病院ではなく専門設備、専門医が揃っている病院でなければできませんが、新たな選択肢として検討してもいいのかもしれませんね。


発症しても長生きできる?

ポメラニアン 心臓

僧帽弁閉鎖不全症を発症したワンちゃんの予後は、発覚時の重症度によって大きく変わってきます。発症直後、軽度で見つける事ができ、すぐに投薬を始めれば数年安定した状態を維持できることも少なくありません。逆に肺水腫等を発症してしまうほど重度の状態で発覚したのであれば、数日から数か月で命の危機に直面することが多いかと思います。

動物病院で勤務していると、発覚時から投薬を始め、もう何年もお薬を飲みながら元気にしているというワンちゃんをよくお見かけします。お薬の処方には定期的な診察や血液検査が必要です。現在の心臓の状態を把握し、今の薬から変更したり増やしたりする判断をするためにとても大切です。

また重度の場合、酸素濃度をあげた酸素室に入院してもらう事が多いのですが、自宅でレンタルできる酸素室というものもあります。こちらはかかりつけの獣医師と相談し使用を検討してみてくださいね。

様々な治療方法がありますが、投薬や検査を定期的に受け、飼い主さんと二人三脚でハイシニア期まで頑張るワンちゃんはたくさんいます。


治療方法は常に進化しています

僧帽弁閉鎖不全症 犬 治療

私が動物看護師になった15年前は、僧帽弁閉鎖不全症の治療は内服薬がメインで、しかも使用できるお薬はとても限定的でした。外科的な手術なんて聞いたこともなかったほどです。

それがこの数年で飛躍的に進化し、ワンちゃん達が飲みやすい心臓薬が誕生し、手術ができる病院まで出てきたのです。この進化は今後もどんどん進んでいくでしょう。

僧帽弁閉鎖不全症はワンちゃん達にとってとても身近な病気です。

発症をできるだけ早く見つけるために定期的な診察をうけること、そして見つかった時は速やかに治療が開始できるよう、今のうちからご家族で考えておくといいかもしれませんね!






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