ペットが体調を崩し、動物病院を受診すると症状緩和のため注射を打つことがあります。注射の内容は病院によって様々ですが、とびきり大きな注射が登場し、驚いてしまった方もいらっしゃるかもしれません。
この大きな注射、その名も【皮下補液(以下、皮下点滴という。)】と呼びます。
動物病院では毎日使用されるとてもポピュラーな存在ですが、初見の飼い主さんからするとギョッとしてしまうサイズで一体何事かと思った!なんてお声もお聞きします。そこで今回は、この皮下点滴の中身や効果について説明します。
皮下点滴とは
皮下点滴とはその名の通り皮下に打つ点滴のことです。点滴といえば腕の血管に針を刺し、輸液剤を流すイメージが強いですよね。この腕に刺す点滴は【静脈点滴】といい急速に体の循環を改善させることができます。しかし腕に異物が繋がっている、飼い主さんから離れ入院しなければならない、などペット達が大きなストレスを抱える可能性も同じくあります。
そういった問題を解決してくれるものが、皮下点滴です。
ペット達には人間と異なり筋肉と皮膚の間に少し空間があり、その空間を皮下と呼びます。この皮下にまとめて輸液剤を注入することで、その後時間をかけて輸液剤を体に吸収させることができるのです。輸液剤を注入するのにかかる時間は5分程度、あとは自宅で過ごしている間に輸液剤が吸収され点滴効果が発揮されていきます。
ただし静脈点滴に比べ効果が出るまで時間がかかること、またその効果も静脈点滴には劣る事から症状が重い時は静脈点滴が優先されることもあります。
皮下点滴の効果
効果の強さは静脈点滴の方が強くはありますが、効能としては同じです。嘔吐や下痢による脱水を改善、循環を促し毒素を排出、ペットが感じているだるさや気持ち悪さを改善するためにも有効です。
輸液剤のみを打つ病院もあれば、ビタミン剤や胃薬、吐き気止めなど様々な薬剤を一緒に打つ病院もあります。気になった時は注射の配合を獣医師に聞いてみてくださいね。
自宅で行う事もできます
この皮下点滴、最大のメリットともいえるのが自宅で行うことができるという点。もちろん打つのは飼い主さんです。とはいえ、どのような子でも...というわけではありません。対象になるのは腎不全や肝不全などの持病を抱えていて、治療として頻繁な皮下点滴が勧められているペット達です。
通院も頻回で、飼い主さんやペットに大きな負担となってしまう時などに皮下点滴セットが獣医師から処方され、初めて自宅で行えるようになります。
打ち方は前もって動物病院で練習できますし、処方時に医療廃棄物の取り扱いについて詳しい説明もあるかと思います。最初はおっかなびっくりで挑む飼い主さんがほとんどですが、あっという間にスタッフ顔負けのレベルに到達されていきます。
病院に行かずに済む、というだけでペットにかかるストレスを減らしてあげる事が可能です。勇気を出してトライしてみてくださいね。
皮下点滴後の様子もよく見ておきましょう
対症療法として選択されることも多い皮下点滴ですが、もちろんその後症状が治まらない時は早めに受診しなければいけません。皮下点滴で改善がなければ血液検査など次のステップに移行することが多いです。
またごくまれですが、皮下点滴の中に入れた薬剤に体が過剰に反応してしまう子がいます。興奮状態になってしまったり、逆に気だるそうに寝てしまったりと気になる様子があれば動物病院に問い合わせてみましょう。
なお皮下点滴直後は、皮下に沢山の輸液剤が溜まっている状態なのでラクダのコブにように皮膚が膨らんで見えますが、吸収されるとともにコブは無くなっていきますので大丈夫です。
皮下点滴後もよく様子を観察し、気になる変化がないかチェックしてあげてくださいね!