動物病院に勤めていると、ペット達と飼い主さんの数だけ物語があります。
『夫婦は似てくる』とよく言いますが、不思議なことに飼い主さんとペット達も似ている!と感じる事が多くあります。それはきっと家族として堅い絆が結ばれているからこそなのでしょう。
病気やケガ、予防接種など動物病院に足を運ぶ理由は様々ですが、愛が溢れているが故のほっこりしてしまう場面や事件も!
今回はそんなエピソードをご紹介していきます。
骨折!?足を痛がる本当の理由とは?
可愛らしいチワワちゃんを慌てて連れていらっしゃった奥様。来院主訴を確認すると『後ろ足を地面につけない』とのこと。足を完全にあげ、全く地面に着くことができない時は骨折の可能性も高いためスタッフにも緊張が走ります。
診察前に看護師である私が問診を取るために飼い主さんを診察室の中へお呼びしました。チワワちゃんは確かに後ろ足をあげ、全く地面に着くことができないようです。
でもその割に痛がる様子もなく、それどころか尻尾を振って大変ご機嫌なご様子。
違和感を感じ「足、少し見せてもらってもいいかな?」と声をかけながら後ろ足を確認すると…何やら肉球にべったりとくっついているではありませんか。
「お母さん、これのせいかなと思うのですが…お心当たりありますか?」と伺うと、飼い主さんは一瞬絶句したあと
「これ…おばあちゃんの…ピップ〇レキバン…!」
と絞り出すように答えてくださいました。
スタッフの緊張も解け途端に和やかな雰囲気に。その後肉球が傷つかないようピップ〇レキバンを剥がし元気に帰宅していかれました。
まさかガン!?涙目の飼い主さんに告げられたのは…
お次にいらしたのは若いお兄さんと女の子の猫ちゃんペアの患者様です。
お一人暮らしの大切なパートナーとして猫ちゃんを迎え入れ、健診や予防にも熱心に通っていただいていました。とても可愛がられているご様子がスタッフにも伝わってくるような素敵な飼い主様です。ところがその日は浮かない表情のお兄さん、診察室で事情を聞くと突然お腹にしこりが沢山できてしまったとのこと。
来院前にインターネットで検索し悪性腫瘍なのではないかと不安になってしまったそうです。猫ちゃんはまだ若く、避妊手術も若齢で済ませていたので(ガンや乳腺腫瘍の可能性は低そうだけど…)と思いながらもまずは患部を見せてもらうことにしました。
キャリーバックから猫ちゃんを出すお兄さんは今にも泣きだしてしまいそうなほど思い詰めたお顔をされています…。
「これです…こことここと、あと毛に隠れてるんですけどこっちにも…」とお兄さんに患部を見せて頂き、スタッフ一同失礼ながらもホッと安心しました。それは腫瘍でもなんでもなかったのです。
「これは……全部乳首、ですね!!」
お伝えするとお兄さんは驚きながら「えっ!?猫にも乳首、あるんですか!?」と言いながらも安心したようで、満面の笑みを見せてくださいました。その後はせっかく来たので…。と検診を受け無事ご帰宅頂きました!
飼い主さんが好きすぎて食べてしまったもの
最後は飼い主が大好きなゴールデンレトリバーちゃんのお話。
子犬期から飼い主さんにべったりだったこのワンちゃん。体が大きくなっても飼い主さんへの愛は大きくなる一方のようで来院時はなんと抱っこでいらっしゃるほどラブラブが印象的な患者様でした。
ところがこの大きな愛がとんでもない事件を巻き起こしてしまったのです。
事件はワンちゃんがお留守番中に起きたようです。寂しくなってしまったワンちゃんは飼い主さんの丸めた靴下をかじって遊び寂しさを紛らわせていました。実は飼い主さんの靴下は特別匂いが強く、遊び道具として好むワンちゃんは沢山います。
ところが遊びが過熱したワンちゃんはその靴下をゴクン!と飲み込んでしまったのです。翌日、お腹の中で靴下が詰まったことにより嘔吐症状が始まりました。靴下が見当たらないことに気が付いた飼い主さんは大慌てでご来院。
時間が経過していたこともあり即日で麻酔下での摘出処置となってしまいました。処置は無事成功し、靴下も摘出されましたが念のため入院しなくてはいけません。
離れるときはお互いに寂しさいっぱいの表情でしたがワンちゃんの回復も早く、その後元気に退院していかれました。
どんなことでも是非動物病院へ
我が子が大切だからこそ、いざという時はパニックになってしまうものですよね。
動物病院のスタッフはプロでもありますが、中身は皆さまと同じく動物が大好きな人間ですからそのお気持ちもよくよく理解しています。
どんな些細な事でも抱え込まず気軽に受診してみてくださいね。