私たちヒトでも、心の不調というのは体にさまざまな症状をきたしてしまうものです。そして、当然ワンちゃん達にもそういった現象が見られます。
嘔吐や下痢、トイレの失敗や自傷行為、その子その子によって症状は色々ですが、その中で代表的な疾患として【分離不安症】というものがあげられます。
どのような犬種、年齢でも発症する可能性があるこの病気。治療には飼い主さんの力が必要です。そこで今回は分離不安症について詳しくご説明していきます。
分離不安症とはどういう病気?原因は?
分離不安症は、飼い主さんの姿が見えなくなったときや、お留守番のときにワンちゃんに色々な症状が現れる不安障害の1つです。
もともと群れで生活するワンちゃん達は、ひとりぼっちが得意ではありません。それでも、日々の生活の中で飼い主さんは必ず帰ってくると学習し、お留守番もできるようになり、自宅内では安心して過ごしています。
ところが、何かのきっかけで不安が爆発し、気持ちのコントロールができなくなったときに、分離不安症としての症状が見られるようになります。
発症する原因はさまざまで、引っ越しなどによって生活環境が大きく変わったり、お留守番が長すぎた、虐待によるトラウマがある、産まれてすぐに母犬や兄弟犬から引き離された、などがあげられます。
分離不安症の症状
分離不安症の症状は個体差があり、複数の症状が出る子も。代表的な症状は以下になります。
・トイレの失敗
・飼い主さんが見えるまで鳴き続ける
・自傷行為
・ひっきりなしに体を舐める
・嘔吐や下痢
・パニック
・家具を傷つける
自宅でできる対策や対応方法
分離不安症の治療には、飼い主さんの協力が必須です。なぜなら不安を打ち消し、安心感を与えてあげられる最大の存在が、大好きな飼い主さんだけだからです。
生活環境に分離不安を発症させるような引き金があるケースは、まず原因の排除を優先します。生後間もなく母犬から引き離された、虐待を受けていた経験があるなど、過去の生育問題がきっかけになっているような子には、「今の環境は安心して大丈夫なんだよ」と根気よく伝え、理解してもらうほかありません。
自宅では分離不安症の根源治療がメインになります。常に一緒にいてあげるのは難しいため、まずは短時間のお留守番が目標です。
ファーストステップとして、まずは数十秒間、愛犬の前から姿を消してみましょう。この時声をかけたり、テンションを上げないよう注意してください。これはワンちゃんが飼い主さんがいなくなることに気構えしすぎないようにするためです。
慣れてきたら少しずつ時間をのばしていきます。姿が見えなくなっても大丈夫なんだと、実体験を通して学習してもらう事が大切なのです。
また、散歩の時間や食事の内容の見直しが症状改善に役立つこともあります。愛犬と向き合いながら、ゆっくりその子その子に見合った方法を積み重ねながら進めていきましょう。
病院でできる治療
病院では分離不安症によって出てしまう下痢や嘔吐、膀胱炎などの症状に対して対症療法を行います。
さらに心を落ち着かせるサプリメントの処方、そして生活に支障が出るほど症状がひどい子のためには安定剤の処方も可能です。
行動療法に詳しい獣医師が在籍する病院を選ぶのもいいでしょう。
愛犬の心を守ってあげよう
愛犬が分離不安症とわかるまで、時間がかかることもあります。理由はわからないけれど体調をよく壊す、普段は大人しいのにお留守番中だけ人が変わったように泣き叫ぶ、断片的な症状から段々と分離不安症がわかるケースも。
実際、私が一緒に暮らしていた愛犬も分離不安症になり、自傷行為やパニックの症状がみられました。突然スイッチが入り、昼夜問わず泣き叫びながら自身を攻撃してしまうのです。うっかり手を出してしまい、手の平が貫通するほどの咬み傷を負った経験もあります。
愛犬を怖いと感じた日もありました。それでもやっぱり可愛い家族の一員である事にはかわりありません!
我が子の場合は運動量を増やし、自宅内での過ごし方を意識したことでかなり症状は緩和されました。それでも改善を実感するまで数年の時間を要しました。
時には出口が見えず、接し方がわからなくなってしまうかもしれません...。しかし、ぜひ長い目でみて、1つずつ出来ることから試していただきたいと思います。