黒い犬差別?“Black dog syndrome”ブラックドッグシンドローム

「シェルターに保護されている黒い犬は他の明るい毛色の犬たちに比べて新しい家族に引き取られにくい」という傾向を表す”Black dog syndrome”(ブラックドッグシンドローム)という言葉があるのをご存知でしょうか。

主に英語圏で知られているこの言葉ですが、今まで聞いたことのなかった方も多いのではないでしょうか。ましてや黒い毛色の犬たちがそのように評価されていることに疑問を感じる方もいるでしょう。

このような言葉が生まれるに至っては、実は宗教が深く関連しています。

イギリスの伝承 Black Dog“ブラックドッグ”

黒い犬のアップ
▲黒い毛色の犬と宗教の関係

イギリスの伝承にブラックドッグというゴースト、または悪魔とされるものが存在します。それは真っ黒な子牛ほどの大きな犬の姿をしており、赤く光る眼を持ち夜行性で非常に凶暴、姿形を自在に変化させることができると言われています。

またブラックドッグは死の兆しとして恐れられ、出会った者には近いうちに死が訪れると言われます。

オカルト的な話が大好きな筆者にはこういった伝承は大変興味をそそられるものですが、怖いと感じた方もいらっしゃるでしょう。実はこのような伝承が、黒い犬への差別、ブラックドッグシンドロームの原因だと考えられています。


宗教との関係性

黒い犬
▲イメージから生まれた差別

悪魔と言われている以上、宗教的な面からみるとブラックドッグは非常に邪悪で恐ろしい存在です。

日本は無宗教と言われるほど宗教にあまり関心のない人が多数を占めていますが、世界中には様々な宗教があります。「天使」と「悪魔」という存在はあらゆる宗教において語られます。日本人になじみ深い仏教にも天使、悪魔にあたるものが存在するのです。

天使は善良なもので悪魔は邪悪なものというイメージが自然と付いていますよね。

ブラックドッグが映画や本の中で悪魔として邪悪に描かれ、人々にそう信じられていれば、真っ黒な毛色の特に大型犬にそんなイメージが付いてしまうのは避けられません。

また、黒という色に人はマイナスなイメージを持つ傾向があります。魔女狩りの時代、ヨーロッパでは黒猫が黒魔術を使う魔女の使いであるとして人々の攻撃対象になったと言われています。

もちろん黒猫は魔女の使いではないし、黒い犬も悪魔ではありません。けれども歴史や宗教の流れから彼らにはそういったイメージが付いてしまったというわけです。


マイナスなイメージを無くすプロジェクト

黒い犬精霊
▲黒い犬に罪はない。良い伝承もあります。

ブラックドッグシンドロームはシェルターで黒い犬が引き取られにくいという事を指すと冒頭でも述べましたが、実はこのような話に根拠はなく、実際に犬達を引き取る際に重視されるのは体の色でなく年齢だと主張する声も上がっています。

もちろん様々な宗教になじみ深い英語圏の人たちの中にも黒い犬を家族に迎えた人は多く存在します。

それでも黒い毛色の、特に大型犬は見た目で怖がられてしまうことも少なくないため、世界では黒い犬へのマイナスなイメージを無くそうと、彼らのかわいらしい写真を撮り、共有していくプロジェクトも行われています。

またブラックドッグに関する伝承も悪いものばかりではありません。善良な精霊としてのブラックドッグは迷える人間を導いて助けたり、超自然的な世界や生物の秘密を守る存在だと言われます。

そう考えるととても神秘的で美しい存在のように思えてきませんか?

マイナスなイメージを払拭することは難しいですが、こうして話題に上ることで黒い犬たちの魅力が広まってくれることを願いたいですね。
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