犬の声帯除去手術、目的や手術のリスクとは?

犬の声帯除去

愛犬の声を奪う【声帯除去】という手術があることをご存知でしょうか?

完全に声を失うわけではありませんがかすれ声しか出なくなってしまうこの手術。もちろん病気の治療として行う事もありますが、多くは人間の都合で行われています。

ではどのように行われ、その後の人生にどんな影響が出るのでしょうか?今回は声帯除去手術を詳しく掘り下げてご説明していきます。



目次
■声帯除去手術とは
■手術の目的
■手術への賛否
■もし手術を迷ったら


声帯除去手術とは

犬の声帯除去手術

声帯除去手術とはその名の通り声帯を切除する手術のことです。

全身麻酔下で行う手術で、方法は2通り。1つは声帯のひだを切除する「口腔アプローチ法」、そしてもう1つは喉仏の部分を切開して声帯を切除する「喉頭切開アプローチ法」です。病院によって採用している術式は異なります。

費用は大体8~10万円前後で、日帰りか1泊入院が一般的です。

術後は声が出にくくなりますが完全に声を失うわけではなく、しゃがれた声やかすれた声になります。また手術から時間が経過するとともに声帯が再生し、普通に声が出せるようになるケースも珍しくありません。

犬 声帯手術の理由

日本では明確に禁じられているわけではありませんが、この手術は動物愛護の観点から禁じている国もあり、病院によっては行わないと決めているところも。

手術を希望する際は、どういった目的で手術を受けたいのかを申告し、獣医師と相談する必要があります。


手術の目的

吠える犬 手術

この手術の目的は大きく分けて2つあります。

1つは声帯付近に腫瘍ができてしまった、呼吸器にトラブルがあった、など病気を治すために手術が必要となるケース。そしてもう1つが「鳴き声」を抑えたいという飼い主さんの希望があって手術が必要になったときです。

私が約16年動物看護師をしている中で、実際にこの手術が行われたことがありますが、そのほとんどが「鳴き声を抑えたい」という理由でした。

例えば「ペット不可の住宅に愛犬を連れて行きたい」「認知症が進み夜鳴きが激しく近隣トラブルになっている」「無駄吠えがあり生活に支障をきたす」など、愛犬と過ごすには問題があるが、それでも愛犬と暮らしていく道を諦めたくないという方が多かったように思います。


手術への賛否

声帯手術 賛否

「鳴く」というのはワンちゃん達が当たり前に行う生活行動であり、それを人間の都合で奪ってしまう事には賛否の声があります。前述した通りこの手術を行う事自体禁じている国があるほど、倫理的に難しい手術だと個人的にも思います。

ただ手術を行う病院としては、保健所などに連れていかれてしまうよりはワンちゃんと飼い主さんがこの先も一緒に過ごしていく道となれば...という想いで行っていることが多いのではないでしょうか。

少なくても私が勤めていた病院ではそういったケースにのみ対応していました。

声が再生してしまう可能性や手術を行う以上、その後も必ずワンちゃんを大切にしてあげて欲しい事などインフォームドコンセント及びカウンセリングを受け、納得していただいた場合にのみ手術が行われていました。

声帯手術の意味

ただ悲しいことに、私が専門学生の時に出会ったパピーミルにいるブリーダー犬のほとんどが声帯除去手術を受けていました。繁殖を行い、犬としての尊厳を奪い、利益を優先する悪徳なブリーダーにもこういった手術を行ってしまう病院があるのも事実です。

明確な決まりがないので善悪を決めることは難しいのですが、せめて手術を受けるワンちゃん達のその後が幸せなものであることを願ってやみません。


もし手術を迷ったら

犬の声帯手術 迷う

もし手術に迷ったら、遠慮せず病院スタッフに相談してください。

ただ中にはこの手術に否定的な病院もあるのも確かです。場合によってはかかりつけではなく、他の病院さんに相談するのも1つ。事前に複数の動物病院に電話で問い合わせてみてもいいかもしれませんね。

本当に手術が必要か、トレーニングや安定剤などで問題をクリアできないか、納得いくまでよく相談してみてください。手術をうけたことで大好きな飼い主さんと離れずにすんだ子も見てきました。何が正解かはわかりません。

飼い主さんとワンちゃんが、1番穏やかで幸せに生活できる方法を考えてみましょう。

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